雲や風の動きでわかる気象の変化

《観天望気》

ベテラン漁師から学びましょう

「雨蛙が鳴くと明日は雨」「夕虹が出ると晴れ」などと、昔の人は空模様や白然の現象を見て翌日のお天気を判断します。

その土地に根づいた仕事(農作業や土木建築、漁業)に従事している人たちは、ラジオ、テレビの天気予報にも敏感ですが、長い間の経験や勘も大切にします。

この雲の形や動き、風の吹き具合、生物の動作などから明日の天気を予測する技術を<観天望気〉と呼んで、専門家でも参考にするくらいです。

この観天望気を最も活用しているのが、「板子一枚下は地獄」の水際の生活をしている漁業者一わけてもベテランの船頭さんなのです。

この観天望気の的中の確率は、狭い範囲であればあるほど高いようで、瀬戸内海西部全体の観天望気を具体的に紹介するのは、危険ですし誤解を招くおそれもあるので省略しますが、筆者が経験した事例を上げてみました。

広島湾の草津、江波沖で初夏にキス釣りをしていた時のことです。突然、頬に当たる風に気付いた船頭が「マジ(南西風)が出たので切り上げて帰ろう」と言うのです。素人には穏やかな釣り日和でしたが「あれを見ろ」と指し示された沖の、絵の島を挟んだ宮島と能美島の間の水平線は、黒い帯状に膨れているのです。

「30分もしたらここは煮えくりかえっているぞ」との説明にあわてて道具を片付け、船の舳先を港に向けたのですが、すでに周りはタライの中の水が逆立ったように荒れており、ほうほうの体で逃げ帰ったわけです。

これが漁師の<観天望気〉だったわけで、こんな船頭さんなら安心して釣りに行けると確信、以来、船釣りは手前船頭やモーターボートでの釣りは敬遠してきました。
釣りに熱中するのも結構ですが、熟練漁師の知識に触れてみるのも無駄ではありません。(K生)


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